今週から講師が変わった。
いつものように講義開始時にオンラインの小テスト(10問)を受け、そのテストが終わると先週までの講師は去り、新講師となった。
ちなみにテストは前週の講義スライドの復習、という位置づけで、今回で初週を除いた3回目だが、とりあえず満点で通している。
このブログに英文→日本語まとめ作業をすることで、選択問題レベルはしっかり回答できる。
逆に前期の Early Modern History は日本文→英文まとめの作業だったが、どちらの方向性でも日本語⇔英語と、違う言語でアウトプットすると、知識の定着に有効だということがわかった。
今週のテーマはこれ。
Replication crisis, person perception and attribution theory
The replication crisis in psychology(心理学の再現性の危機)
心理学が学問として信頼性を揺るがす事例があったという話からだ。
Amy Cuddy's power poses は2分そのポーズをとるだけで、自信を持て、個人の感情をより強力にするというものだ。
写真:エイミー・カディのパワーポーズ WIKIMEDIA COMMONS出典
彼女の提案するポーズはテストステロンを増加させ、コルチゾール(ストレスホルモン)のレベルを減少させる。
感情制御やリスクをとる行為に対しての準備に役立つことが想定される。
例えば、面接、公共の場でのスピーチ、交渉の現場など。
彼女は心理学者で、2012年にパワーポーズについてTEDでも公演している。
しかし、2016年、彼女の共同著者の Dana Camey はパワーポーズ効果は真実ではないと発言した。
カディのパワーポーズがホルモンレベルに影響するのかどうか、再現できなかった研究もあれば、さらに発展させたポーズから有益な影響が見られた、とする研究もある。
以上のように、これからも情報を更新するとTEDが2017にコメントしている。
議論のポイントは、
・再現性のない結果
・統計的問題と疑問視される研究慣行
ー 少ないサンプル数
ー P-hacking(最大限良い結果が出るよう統計分析を操作すること)
ー 実験参加者のバイアス
・共同著者が「効果がある」とは思っていないと公表
である。
研究者は元の研究でされたように、同じ結果を得ることができず、著名な研究機関でも再現に失敗しているそうだが、心理学上、また社会学上の問題点は、
・(再現性がない為)関連知識の積み上げとして使えない(科学の重要な目的である)
・科学の社会的・公共的自信の減退
・政策者の社会学への信頼低下
を招くことだ。
The wake-up call: A study about premonition, the ability to see the future
(警笛:予感についての研究、未来を見る能力)
この例は、Daryl Bem という Cornell University の心理学者が9つの実験を報告したもので、概要は以下だ。
・うち1つの実験で、ボランティア参加の生徒に48単語を見せ、そして思い出せるだけそれらの単語をあとで書いてもらう。
・そしてそのうち半分の数の単語をランダムに与えられ、タイピングするという訓練を受ける。
・結果は、後で訓練した単語の方が、記憶している生徒がいたという。(結果が原因に先行した)
・Bem はこの結果を Journal of Personality and Social Psychology に他の8つの実験と一緒にエビデンス(彼がPsychic effectsと呼ぶもの)を添えながら投稿した。
・3つの研究チームが個別に再現実験を実施したが、効果は確認されなかった。
2015年に社会心理学者 Brian Nosek によって衝撃的なことが発表された。
彼と269人の共著者が、最近学問を牽引するジャーナルに投稿された98件の心理学の研究について、100件の実験(98件のうち2件については2チームで実施したため100件)のうち39件のみオリジナルの条件で結果を再現できたという。
オリジナルの97%が重要な効果を示した一方、36%の再現実験しか同じ効果を示さなかったのである。
なぜこんなことが起こったのだろうか。
Positive-results bias:
・心理学において肯定的な結果はまるでうわさのように、いったん広まると、払いのけることは難しい。
・それらはほとんどの専門誌で権勢をふるっており、また新しく、エキサイティングな研究である。その間に再現性が確認がされるが、否定的結果の場合、投稿されない。
・PhDの全期間を再現実験に費やし、何一つ再現できない結果、研究機関の成果が何もなく、学術界から去った生徒を見てきた。(Wagenmarkers)
Fraud cases:
2011年、Diederuk Stapel は調査を受け、最終的に不正行為を告白した。
捏造データを少なくとも30の投稿で操作した。
"Many Labs" Replication Project(Brian Nosek)
・グーグルスコラーやScopus、Web of Science、PubMed、Psyclnfoなどを使用する。
・ジャーナルの順位を確認する。
・抄録だけでなくすべての記事を読む
Person perception - Why is it worth a look?
Physical perception vs. person perception
物理的知覚は通常、直接観察可能なものである。(大きさ、色、重さ、味)
そしてそれらについての仮説は確かめることができる。
その結果、知覚エラーのおそれは少なく、修正の可能性は高い。
人物検知では、不可視で単純な推測の質(知性、特徴、性質)がより重要で、エラーの可能性を持った非常に複雑なものとなる。
発声したエラーを修正することが困難なだけでなく、最初に検知することも困難。
多くの歪曲があり、知覚者自身の知覚した人に対する影響が避けられない。
(例 illusory correlation:錯誤相関)
誤った決断により高いコストを払うことになるため、まず、正確さが最も望まれる。
おべっかを使う人を友好的と誤って判断すれば、容易に不正の被害者となる。
究極的には、継続的な他者の知覚の不正確さは孤立を導く。
職場の上司が厳しい人でなんでも制御しようとしてくるが、彼は子どもと一緒にいるときは良き父であり・・・この上司はいったいどんな人物だろうか。
Process instead of accuracy
次に、正確性より人物知覚の処理にフォーカスした研究が始まった。
特に、多くの事例では複雑な知覚判断をとても少ない情報からしていることを考慮して、誰かについての知覚的判断を人はどう組み立てているかについてだ。
とても短い非構造化面接(Unstructured interview)や半構造化面接(Semi-structured interview)をもとに、志願者の人格について重要な決断をする採用分野のプロの多くは「私は人の性格の判断がうまい」と言う。
A:太郎は、知的で、一所懸命働き、直情的、批判的、がんこで、嫉妬深い
B:太郎は、嫉妬深く、がんこで、批判的、直情的、一所懸命働き、知的
AとBを別々のグループに見せ、太郎の性格にポイントをつけてもらうと、それぞれどんな印象になるだろうか。
Solomon Asch's classic experiments in this field:
Primary effects
先の情報が全体の印象に影響を強く与える。
Novelty effects
最後に受け取った情報がそれより先に受け取った情報より全体の印象に影響を与える。
これらから言えることは、中間で受け取った情報は人物判断に重要でないことだ。
Central traits(中心特性)
人格の判断を統制する中心的特性。
Negativity bias
ネガティブな情報は全体の印象に対して大きな影響がある。
Trait interaction
色々な特性と一緒に現れるときは、個々の特性の解釈は異なる。
知的 + クール → 計算高い
知的 + 心温かい → 賢い
あなたのクラスメイトのうちの一人はあなたに対してなぜ友好的に接するのだろうか。
Attribution theories - Why? Why? Why???
Attribution(原因帰属):
なぜ誰かが何かをしたかを人が説明することによって発生する処理。
人間の行為に関することを推測する過程である。
「なぜ?」の疑問に答えるために使用する戦略は Attribution theory(帰属理論)によって研究される。
この理論は包括的・統一的なものではなく、アイディアやルールの集合で、どう人が自身の行動や他者の行動の原因を推察するかについての推論である。
2つの理論グループが発展した。
・Normative (idea) models
どう人が自身やお互いについて正確に考えるべきかを示す理論
・Descriptive models
どう人が自身やお互いについて現実に考えているかを示す理論
(様々な帰属エラーやバイアスを含む)
Heider's attribution theory
彼によれば、人は根本的に行動に、安定と恒久を意味する不変性を求める。
観察可能な重要な刺激から世界の不変の特徴を推測することに帰属処理は関わる。
そしてその基本は、結果の知識、予期、意図に基づく単なる連想である。
Heider and Simmel (1944) animation の動画を見たあと何を思うだろうか。
行動の原因に関して2つのタイプの説明がある。
・Individual / dispositional attributions
雰囲気、人格特性、価値観、意図など、行動の内的原因
・Situational / structural attributions
役割、社会規範、ルール、法律など、行動の外的原因
例:ホームレスを見たとき、「働け」と思うか「困難があっての結果だ」と思うか。
Jones and Davis's theory of correspondent inferences(対応推論理論)
観察された人の行為は常に備わった傾向に帰属すると対応推論は言及する。
1.行為を観察
2.行為者が、
・あらかじめ自身の行為の結果に気づいたかどうか
・行動を実行する能力があるかどうか
を決定
3.行為者のオリジナルの意図を推測
4.行為者の傾向を決定
・社会的に望まれない
・個人の満足に繋がる
・代替えがある
・予測可能な影響がほとんどない
行動は、
・社会的に望まれる
・ルールと役割による
・代替えのない行動
より容易に傾向に帰属する。
社会規範や個人の役割に合致しない行動からの適切な内的傾向について結論を引き出すとき、結果の社会的望ましさが強く決定的となる。
Jones and Harris experiment(1967)
実験に参加したある集団は、フィデル・カストロを擁護するレポート、もしくは反カストロ派のレポートを読んだ。
それらレポートはいずれのテーマにせよ、著者が自ら書くことを選んだトピック、と参加者は考えている。
その後、参加者は著者の真の意見を推測した。
別の参加者集団は、書かれたレポートのトピックについて、著者はそう書くよう指導されたものである、ということを知った上で著者の考えを推測するよう依頼された。
つまり後者の集団は、著者の本当の考えと違うことを書かされた可能性があることを知っているということになり、前者と推測する上での前提が変わってくるが、実験結果は後者の場合でも影響がなかったという。
映画館からお客さんが出てきたとき、みな笑っていることに気づいた場合、
・なぜお客たちはそう笑っていたと考えるか
・対応推論理論によると、どう考えるべきか
Jones and Harris's experiment とこの状況を比較すると、
・実験参加者は状況からではなく著者について結論を引き出さなければと推測した
・更なる制限として、小さなサンプル数(N1=51, N2=97, N3=125)
また、10問の質問に対しての回答スケールが1~7ポイントであり、最低10点~最高70点の得点幅となる。
このことが・・・とグラフが示され、実際の平均がうんたらかんたら。
ここの説明は残念ながらチンプンカンプンだった。
ベラはどんな人だろう?
ベラはある企業の広報担当の職を得たいと願っている。
1.面接を通して、彼女はオープンに振る舞い、会話構築能力を見せようとしていた。
2.面接の間、彼女は控え目で、会話を構築するのに苦労していた。
どのくらいベラは話好きか?
1:全然 ~ 7:とても
Jones, Davis, and Gergen's study(1961)
実験対象者は、職務要件と反対・関連のいずれかの振る舞いをした求職者について判断するよう依頼された。
求職者の中には、外向的性格が必要とされる職に出願するときは外向的に見える者がいた一方で、外向的職務要件にも関わらず内向的に見える者もいた。
職務要件と関連のある振る舞いをした求職者は、実験対象者から中間値で評価された。
他方で、職務要件と反対の振る舞いをした求職者は、本当の性格を見せていると解釈された。
しかし、これは広義に捉えたときのみ真実である。
例えば、ウェイターが親切なのは、それが業務の一部であるからだが、だからといってそのウェイターがもともと親切な人であるという可能性を排除できない。
(内面的理由)
なぜガボルはズージと踊っているか?
・ガボルは頻繁にディスコへ行く
・彼は大抵たくさんの女性とディスコで踊る
・その夜、ズージと踊った男性はほとんどいない
・ガボルは頻繁にディスコへ行く
・彼は普段ディスコで踊らない
・その夜、ズージと踊った男性はたくさんいる
・ガボルはめったに遊びに外出することがなく、もし出ることがあると、飲酒を楽しむ
・彼が外出するとき、大抵ディスコで踊る
・その夜、何人かがズージと踊ったが、彼女は全く知られていない女性だ
Kelley's covariance theory
Harold Kelley は同時に3つの変数集団を扱うという非常に複雑な理論を発展させた。
それゆえ、cube theory または three-dimensional theory とも呼ばれる。
3次元とは、
1.行為が発生する状況や前後関係
2.行動の目的
3.行動する行為者
であり、選択された行為はこれらどれかに帰属する。
3次元の co-variation を調べることによって帰属がされる。
情報の主要な3つのタイプは、
1.Consensus
2.Consistency
3.Distinctiveness
である。
Consensus
皆がそれをする。皆がそれは良いことだと考える。
例:皆がズージと踊りたいと思っている
観察者は他の人達が同じ刺激に対して同じ反応を示すかどうかについて情報を集める。
つまり観察者はその行為に関して Consensus(総意)のレベルを知りたい。
もしも、似た状況で他の人たちが同じような反応をする場合、強い Consensus があると言える。
その人だけの反応であれば、Consensus は弱い。
Consistency
Temporal or modal consistency
例:ガボルはいつもズージと踊る or 彼はいつもこのようにズージと踊る
別の状況で同じものが見られる場合、観察者はまず、時間と共に行動が恒常的に残り続けるかを見たいかもしれない。
その行為者が、違う様式の状況と、違うタイミングで似た状況とで、同じように反応を示すか。
Distinctiveness
行動は与えられた目的から区別されるか。
例:その夜、ガボルは、他のどの女性でもなく、ズージとだけ踊った。
行動は特有か。
特定の人(状況)or 刺激(強い特性)に対しての反応が観察された行為か or 行為者は他の刺激、人々、状況(弱い特性)に特性なしの行為を適用するか。
マリはなぜバーでコメディアンに対して笑ったか?
組み合わせに基づく3つの可能な結果
・Object attribution
行為者がその行為と共に影響を与える目的・目標
・Person attribution
行為者自身が行為の原因
・Situation attribution
行為は状況が誘因
Criticism of Kelley's theory
この理論は Low と High の変遷を制御できない。
明確な結果を与えないパターンがある。
すべての情報が有効なわけではない、または処理できない。
Casual schemas
理論の困難さのため、Kelley はいわゆる Casual schemas で表現した。
(精神的な近道または選考知識や経験に基づく枠組み)
完全な Covariation model(共変モデル)に適用するだけの情報がない場合に頼ることができる。
Discounting principle
強力な原因は他の原因を除外する。
例:飲酒運転の車が衝突したら、タイヤの摩耗、路面の滑りやすさ、視界不良などの状況を考慮なしに事故原因を酩酊状態へ帰属する。
Multiple sufficient causes
個々がそれぞれ独立に行動を説明できる原因が複数ある場合。
例:ある日、少年がバイオリオンを引くのに苦労しているのは、技術がない、具合が悪い、または講師が彼を嫌っている。
Augmentation principle
行為を阻害する状況にも関わらず、発生する事例は内面的原因に帰属する。
例:マイケルジョーダンは最後の試合で病気で寝不足にもかからず、38得点した。
Multiple necessary causes
1つの原因に絞り込むことが難しい事例。
例:F1ドライバーの勝利は、ドライバー、ピットクルー、天気、他の競技者など複数の要因に帰属する。
What is the problem with normative theories?
説明を探すことに非合理的な要素が含まれる。
例:アベルはクラスメイト。いくつかの理由で彼にがまんできない。どうすべきか。
1.否定せよ。みなが同様に受け入れられるべきだ。
2.合理的原因を見つけよ。彼は勉強をしない。(しかし必ずしも真の原因ではない)
3.真の原因を明らかにせよ。(タブー、礼儀正しさ:しばしば困難)
この状況に何を考える?
・ジョンが教室で本を読んでいた。
・ピータが教室に入った。
・ジョンは出て行った。
Attribution bias(帰属バイアス)
空間的にも時間的にも偶然だとしても、原因と意図を連想する。
Bias toward internal attribution or fundamental attribution error は非自発的状況で示される行動に基づいたレポート著者の立場を観察者が推察するとき発生する。
Actor-observer bias(行為者 - 観察者バイアス)
行為者は外的原因に行動が帰属する傾向にある一方、観察者は内的要因に行動の原因を帰属させる。
(遅刻したのは交通機関が原因だろう vs 遅刻したのは寝坊のせいだろう)
Visibility problems
異なった視点が異なった帰属を導く。
Taylor and Fiske's study で、会話の中で誰が優勢か、誰がリードしているか、誰がより活発かを参加者は容易に判断した。
しかし、この判断はしばしば、参加者各々の位置に従い、誰がより良く見えているかに基づかれていることを参加者は理解しなかった。
これも、行為者 - 観察者バイアスの一部である。
行為者として、行為を導く外的で、不安定な要素を明確に見ることができる。
(電車が来なかったので、救急車が横切ったので遅刻した。具合が悪かったので、友達の勉強を手伝ったので勉強できなかった)
False consensus effect
何をしようとも、ほとんどの人は同じことをするだろう。だから何をしようともこれが規範となる。そしてなんでも反対のことは逸脱した行為となる。私は大抵こんな行為を内面的原因に帰属させる。
Just world hypothesis
人は望むものを手に入れる。離職者、ホームレス、被害者の立場など。
Ultimate attribution error
自分の集団と他の集団とで行動への説明が異なる。
Egocentric thinking
自身の環境に起こる事例を自身から導く傾向がある。
Different explanations for success and failure
男女、人種、移民、ネイティブの違い。
今週のポイント。
Replication crisis(再現性の危機)とは何か、なぜ問題か。例は?
Person perception(人物認知)は Physical perception(物理的認知)とどう違うか。
帰属理論:
Normative theories(Heider, Jones and Davis)
Irrational elements in searching for explanations
今週も疲れた。
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